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脊髄損傷とは?

脊髄損傷とは?

脊髄損傷 せきずいそんしょう、英語:Spinal Cord Injury

脊髄損傷は、主に脊柱に強い外力が加えられることにより、脊髄に損傷をうけた病態のことをいいます。脊髄の損傷は外傷によるものが多く、椎骨の骨折や脱臼により起こります。また、このような外的要因だけでなく、疾病などによる脊髄腫瘍やヘルニアなど内的要因によっても類似の障害が発生することがあります。後天的に発生する場合が多く、外傷のほか、脊髄の炎症・脊髄や脊柱の腫瘍・血管の異常などが原因です。先天的な場合は二分脊髄や、脊髄空洞症などが原因となることがあります。神経学の権威でノーベル医学賞受賞者であったサンティアゴ・ラモン・カハールが1928年に「成熟した神経回路は固定されていて変更不能であり、あらゆるものは死にゆくことはあっても再生することはない」と主張したことにより、長い間、脊髄を含む中枢神経系は一度損傷すると修復・再生されることは無いと考えられていましたが、現在では中枢神経の回復が成熟した神経回路でも起こると証明されています。
(「再生医療」の項にて詳細を記載)

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一般的な症状

脊髄の損傷部位・程度によって「完全損傷」と「不完全損傷」に分類されます。「完全損傷」は脊髄が横断的に離断され、神経伝達機能が完全に絶たれた状態であり、損傷部位以下の機能が完全に麻痺してしまいます。また、仙髄機能が温存されておらず肛門周囲の知覚や肛門括約筋の収縮が見られない状態です。「不完全損傷」の場合は脊髄の一部が損傷、圧迫などを受け、一部機能が残存するものを指します。そして、仙髄機能が温存されている状態で、その指標として肛門周囲の知覚の残存、肛門括約筋の随意性の収縮のどちらか1つでも認められている状態をいいます。
(ASIA:アメリカ脊髄損傷協会 神経学的分類に基づく)
完全損傷の場合、損傷部位以下は上位中枢からの支配を失い、脳からの運動命令は届かず運動機能が失われます。また、上位中枢へ感覚情報を送ることもできなくなるため、感覚知覚機能も失われます。つまり損傷してしまった脊髄の支配レベル以下は「動かない、感じない」という状態に陥るということです。

ただしJ-Workoutでトレーニングを行っていく上で、仙髄の感覚・運動機能が戻ってきた場合は「完全損傷」損傷から「不完全損傷」と判断されます。

完全損傷と言っても、全く何も感じないわけではなく、受傷部位以下に疼痛が残ることが多くみられます。また、痺れなどの異常知覚、麻痺部で本来感じないはずの痛みを感じることもあります。トレーニングによって一時的にこの痺れや痛みの増強がおこることがありますが、これらは麻痺部からの求心性情報を受け取っているという可能性を示しています。J-Workoutでは独自の方法を使用し、これらの症状をさらに強く長くするよう導き、脊髄神経の回復段階の一部として有効活用します。

また、別の症状としては、上位頸髄損傷の場合、感覚、運動だけではなく自律神経系も同時に損なわれています。そのため、汗をかく、鳥肌を立てる、血管を収縮/拡張させるといった自律神経系の調節も機能しない、あるいは低下し、体温調節、血圧のコントロールが困難となります。その為、起立時の低血圧を引き起こしやすくなり(起立性低血圧)重症な場合、車椅子上の座位状態でも低血圧を起こす事があります。また、麻痺部においては代謝や血流が低下しているため、外傷などは治りにくい傾向にあります。

かつては脊髄損傷患者の寿命は健常者に対し、大幅に短いものでしたが、現在では医療技術の発展に伴い、およそ5%程度短いだけの平均寿命となっています。つまり、その分だけ脊髄損傷患者の生活を改善する必要性が増していることになります。J-Workoutで定期的に全身運動を行っているクライアントの方は、2次的な健康被害に悩まれている方が少ない傾向にあります。代表的な疾患としては、肺炎です。脊損患者の方に肺炎が多い原因は、十分に肋間筋等を使えず、呼吸機能が十分でないということにあります。呼吸というのは横隔膜で肺を拡げて、それで肋間筋や腹筋等でぐっと肺を縮めて空気を出すわけです。胸部脊髄の上の損傷の方、あるいは頸髄損傷の方というのは、肋間筋等が十分に駆使できませんので、強い咳が出せないとか、喀痰が出しにくい状態になります。このために、菌が入りやすい、抜けにくいという状況になって肺炎になりやすく重症化・反復化しやすくなります。また、肺活量が低下していることが肺炎の重症化につながっています。それから、脊髄損傷者は運動習慣が低下しているための免疫力低下の問題も挙げられます。運動習慣を持っていますと、免疫力が上がるというデータがあります。

脊損の方の耐糖能障害は健常者の2倍です。ですから、2倍の耐糖能障害を持つということは、心筋梗塞とか狭心症になる可能性も2倍と考えなければならないということです。脊損の方の耐糖能障害が多いわけは、運動習慣が少ないこと、またそのような施設がないこと・あったとしても実際に運動できる人は一部の人に限られていることにあります。もちろん、車いすの競技もありますが、実際には、なかなかできにくいのが現実です。また、運動時には、おもに上肢の筋肉を使い、足の筋肉は使いませんから、使用運動筋肉量が少なくなってしまいます。そのため、筋肉組織自体がインスリンに反応しなくなり、それがインスリン抵抗性をあげているという悪循環になり、それらの結果、脊損の方には耐糖能障害が多いということになるのだと考えられます。
J-Workoutでは麻痺部を含めた全身運動をおこない、なるべく上半身に頼らないよう指導していきます。定期的に下肢・上肢の筋周囲の測定を行いますが、実際に上肢・下肢の両方に筋肥大がみられます。

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損傷部位と機能障害

ヒトの脊柱は頸椎 Cervical vertebrae (1−7椎) 、胸椎 Thoracic vertebrae (1−12椎) 、腰椎 Lumbar vertebrae (1−5椎) 、仙椎 Sacrum (1-5椎) 、尾椎 Coccyx(馬尾神経) に分けられます。損傷箇所が上に行くほど、障害レベルは高くなり、制限を受ける動作が多くなります。
障害の度合いを説明する際は、それぞれの英語表記の頭文字を取って「C5の完全麻痺」「Th12の不完全麻痺」と表現することで、障害レベルをある程度他者に伝えることが可能となります。「C5の完全麻痺」の場合、C5までの機能は残っているが、C6の以降の機能障害を受けていることを示しています。

2002年の調査によると、脊髄の損傷部位は頸髄が最も多く、特に頸髄損傷はC6あたりの頻度が多く見られます。C6を損傷するということは、C5が麻痺していないため上腕二頭筋は収縮ができますが、C7より上位の損傷の場合は、C7の支配が上腕三頭筋のため、麻痺により上腕三頭筋が収縮できず肘を自力で伸ばすことが困難となります。C6は自立生活を送れるかどうか、C7はトランスファーができるかどうかの境界線になる可能性が高いということです。肘の伸展が可能かどうかで生活の質は大きく変わります。
完全損傷の場合、仙髄以下では排泄、勃起などの機能に支障をきたし、更に、下部胸髄から腰髄では両下肢が麻痺します。上部胸髄では腹筋・背筋が機能を失うため、体幹の保持も困難となります。さらに頸髄を高い位置で損傷すると上肢だけでなく呼吸筋まで麻痺し、人工呼吸器なしには生きられなくなってしまいます。しかし、実際の損傷部位と、残存機能は異なることがあります。
現在、J-Workoutでは自発呼吸のできる方のみトレーニングの指導を行なっております。

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受傷原因

現在日本には10万人以上の脊損者がおり、毎年5000人以上があらたに脊髄損傷を負っています。
1990 - 1992年の調査によると、受傷原因の割合は以下の通りです。
交通事故 (43.7%)
高所からの落下 (28.9%)
転倒 (12.9%)
打撲・下敷き (5.5%)
スポーツ (5.4%)
その他 (3.6%)
この時点の調査によると、男性は女性の約4倍を占めており、受傷時年齢は50歳代と20歳代にピークが見られます。2002年に行った同様の調査によると、今現在でも男性と女性の比率は4:1で、受傷年齢も同様に50歳と20歳にピークのある二相性のパターンが見られます。ただし、2002年の50歳以降の受傷例の割合は1990−1992年より増加しています。受傷原因の交通事故は減少傾向にあるものの、歩行中の転倒による受傷が12.9%から19.0%に増えています。近年は高齢化に伴って歩行中の転倒、頸椎ヘルニアや脊髄狭窄症などあらたな受傷原因となるものも出てきております。高齢脊髄損傷の増加には二つの側面があり、ひとつは高齢になって脊髄損傷に受傷する方の増加傾向であり、もうひとつは脊髄損傷者が高齢化する問題です。今後、高齢者の転倒・転落予防対策、また脊髄損傷後の健康維持対策が大切になるでしょう。

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脊髄を損傷すると

事故現場、スポーツ現場において救急救命の際、脊椎の屈曲,伸展により,脊髄の挫傷や離断が生じる可能性があります。したがって,受傷者を動かす際の取り扱いが不適切であると,脊髄を損傷させて片麻痺,四肢麻痺,さらには死をもたらす可能性があります。そのため、気道,呼吸,循環を安定させた後は,脊椎や脊髄への二次損傷の防止に目標を置きます。脊髄損傷の可能性のある患者は,身体を一体的に動かすようにし,固くて平らな背板または同様の表面の物の上に乗せ,過度の圧迫を与えずに体位を安定させる当て物をして搬送する。
頸髄損傷の場合は首を動かすとさらに障害を広げることになります。そういった意味で、多発外傷や鎖骨より上部の損傷がある場合は頸髄損傷があるものと考え頸部を中間位で固定するために,固いネックカラーを装着します。特に、呼吸困難を誘発する可能性のある頸髄損傷患者は,背臥位にして運び,気道を確保し,胸部を圧迫しないように注意しなければなりません。胸髄または腰髄損傷患者は,腹臥位または背臥位にして外傷センターに運びます。

脊髄損傷が起きると神経原性ショックが起こり、血圧が下がり徐脈傾向となります。これは主に上位胸椎より高位の脊髄損傷によるショックで,自律神経系失調によって引きおこされた末梢血管弛緩による血圧低下です。低酸素および低血圧はいずれも,損傷した脊髄にさらなるストレスを与えうるため,治療はこれらの回避に向けられます。一例として、脊髄損傷後8時間以内にはコルチコステロイド大量投与は開始されます。腫脹と局所的な痛みが引くまで,損傷は外科手術を施行するかしないかに関わらず,安静,鎮痛薬,筋弛緩薬で治療します。

受傷後、脊髄の機能が失われ脊髄ショックと呼ばれる状態になります。(受傷後数時間から48時間、ときに数週間)これは損傷部位以下の感覚や知覚の脱失、運動障害、膀胱直腸障害などのような身体の基本的な機能が失われる時期の事をさします。しかし、この時点では真の障害像を示しているわけではなく、患者が将来完全麻痺となるかは全く予測ができません。脊髄ショックから離脱した時点で不完全麻痺であったら回復する可能性があります。脊髄ショックは基本的には24時間から48時間以内に離脱すると言われていますが損傷部位や症状によって差が大きいです。48時間経過して完全麻痺であっても、それは永続的な麻痺となるとは限りません。脊髄浮腫の程度と期間によっても左右されます。脊髄ショックから離脱したかどうか判定するには球海綿体反射を用いることが多いです。指を肛門にいれて亀頭または陰核を圧迫すると肛門が絞まります。これを球海綿体反射陽性といい、ショックから離脱したという所見です。
時間が経過して脊髄ショック期を過ぎると、今度は動かせないはずの筋肉が本人の意思とは関係なく収縮したり、痙攣を起こすことがあります。これを痙性または痙縮と呼びます。
一般的には不必要で邪魔なものと考えられていますが、J-Workoutでは痙性も利用し随意運動・歩行運動へと導いていきます。痙性が強すぎてコントロールができない場合は、上手くコントロールしていく方法を習得してもらいます。痙性がとても弱い状態のクライアントには痙性を増やすトレーニングを施行します。痙性が起こる事で、一定の筋肉量が保たれ骨密度の低下を抑える事ができるようになる為です。痙性の有無に関わらず外的刺激が加わるエクササイズを取り入れてトレーニングを積極的におこないます。

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一般的なリハビリテーション

受傷後、急性期を過ぎたらなるべく早くリハビリテーションを行うことが理想です。長く寝ていればいるほど筋肉が落ち、循環機能は低下し、復帰までの時間がかかるようになるからです。リハビリテーションは,理学療法,技術訓練活動,および社会的,情緒的ニーズに応えるためのカウンセリングを組み合わせたチームアプローチとして提供されます。集中治療(ICU)から一般病棟に移ったら、時期を見て少しずつベッドのリクライニング角度を上げていきます(ギャッジアップ)。長時間仰臥していたことにより、血圧が低下しており、急に体を起こすと特に頸髄損傷者においては自律神経が機能しないため脳貧血を起こします。次にベッド上でのリクライニングに慣れてくると車椅子に移る訓練になります。車椅子上で脳貧血を起こさないようになれば、看護師、ソーシャルワーカー、栄養士、心理士、理学療法士、作業療法士、レクリエーション療法士、職業カウンセラーなどによる様々なリハビリテーションを開始します。

理学療法は、筋肉の強化、および装具、歩行器、車椅子など、活動性を改善するために必要となる補助器具の適切な使用の訓練に焦点を当てます。痙性、自律神経異常反射、神経原性疼痛をコントロールする方法が教示される。作業療法は、微細運動能力の再発達に焦点を当てます。膀胱および腸の管理プログラムでは、排尿、排便の技術が指導され、これには間欠的カテーテル法が使用されることがあります。

職業リハビリテーションには、微細および粗大運動能力の両方、ならびに認知能力の評価が含まれ、雇用に就ける可能性あるかどうかが判断されます。次に職業教育の専門家が、可能な職場を特定し、補助器具や実際に働く場所の改修の必要性を判断します。レクリエーション療法士は参加が可能な趣味、運動、その他の活動を特定し参加を促します。

心のケアは、体を制御できなくなった後に生じる離人症や、うつ状態を克服させることを目的とします。心のケアは、他のリハビリテーション構成要素を成功させる上で基本となる要素ですので、それには患者を教育し家族や友人の積極的な関わりを促すための努力が必要になります。

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一般的なリハビリとJ-Workoutの違い

上記で紹介したような、日本の一般的な病院で行われている脊髄損傷のリハビリテーションとは失われた機能を回復させることではありません。「一度脊髄を損傷すると機能を回復することはほぼ不可能」というこれまでの定説から、歩行を目指すためのリハビリテーションはほとんど行われていません。病院のリハビリの目的は、「残された機能をいかにして使い、ADL(日常生活動作)を可能にするか」という点に焦点が絞られています。残存機能を今までの120%にも150%にも使い、必要な筋力を強化し、車椅子の操作などに習熟することなど、新しい状況に慣れていく過程が、日本の脊髄損傷におけるリハビリテーションです。

J-workoutが既存のリハビリ施設と大きく異なるのは、「動かすことのできない部分」の機能回復も目指している点です。近年、修復が不可能とされてきた中枢神経組織の理論が、中枢神経の可逆性、修復、再生等の立証によって変わりつつあります。これらは全て、損傷部位の上下におりて、適切なレベルの神経運動を根気よく続けたことに関係性があります。今ではリハビリを実行することによって、神経組織の機能的回復を期待することができるようになりました。問題は、そのようなリハビリは長期に渡って実施すること不可欠であることです。現在日本ではそのような神経運動を長期で行うことが可能な医療機関がないということや、医療保険の適応期間か限られていることが機能的回復の可能性を阻んでいます。例え、長期にわたる運動が神経組織の機能的回復に繋がることが立証されていても、残念ながらそれを実施する場所が今の日本には存在しません。

J-Workoutは日本で唯一の慢性期の脊髄損傷者のトレーニングを長期間に渡って行なうことが可能な施設です。J-Workoutの独自の方法を用いて、クライアントの方の神経組織に働きかけ再組織化を図り、残された脊髄神経に歩行機能を再教育するのです。

出来る限り早い段階でトレーニングを開始した方が回復は早いと言われています。ただ、たとえ受傷後のトレーニングの開始時期が遅かったとしても、あきらめることはありません。実際、J-Workoutに来ている方は急性期・慢性期のリハビリテーションを病院で終え、慢性期に突入しているかたばかりです。その有効性は、科学的にも実証済みで、受傷一ヶ月程度の「急性期」の方だけでなく、受傷2ヶ月〜20年の「慢性期」の方の機能回復を果たしたとして、科学誌「NATURE」にも掲載されました。

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合併症

脊髄損傷による麻痺以外に、様々な別の身体的リスクが発生します。その中でも「二大合併症」といわれるのが【褥創】と【尿路感染症】である。

【褥創】

褥創(じょくそう)はよく「床ずれ」と言い換えられることがありますが、実際にはそのような生易しいものではなく、血流障害による皮膚の壊死のことです。
通常であれば、長時間同じ姿勢で座っていたり横になっていると、接地面の血流が不足し、痺れや鈍痛を感じ、無意識的に座位を変えたり寝返りを打ったりしているものです。ところが脊髄損傷によって感覚を失っているとそれが知覚できず、圧迫され続けた部位が血行不良により酸素と栄養分不足となり組織を冒してしまいます。筋肉を動かさないことによって筋肉の廃用性萎縮がおこり、露出してしまった骨が薄い皮膚を圧迫することもこれを助長します。最も多い褥創の部位は仙骨部(約50%)踵骨部(15%)尾骨部(10%)で、他にも、坐骨部、大転子部、また、下肢だけでなく、上肢(肩峰部、肋骨部など)にも見られます。
最初は皮膚が赤らむ程度から始まりますが、最も重篤な場合には真皮を突き抜けて脂肪層までえぐられるように壊死を起こすこともあります。脊髄損傷者は皮膚再生能力も落ちている為、こうなると数ヶ月に及び入院が必要となることも珍しくはありません。

褥創を段階的な「DESIGN(デザイン)」という項目で分類することができます。

D:Depth(深さ)
創内の一番深いところで判定し、真皮全層の損傷までを"d"
皮下組織を超えた損傷を"D"
E:Exudate(滲出液)
ドレッシング交換(創部を覆う保護材)の回数が1日1回以下を"e"
1日2回以上の交換の場合を"E"
S:Size(サイズ)
創部の長径(cm)×直交する長径(cm)=100未満を"s"、100以上を"S"
I:Inflammation(炎症/感染)
感染兆候のないものを" i "
感染兆候のあるものを" I "
G:Granulation tissue(肉芽組織)
良性肉芽の割合が50%以上を"g"
良性肉芽の割合が50%未満を"G"
(良性肉芽とは必ずしも病理組織学的所見とは限らず、鮮紅色を呈する肉芽を表現するものである。)
N:Necrotic tissue(壊死組織)
壊死組織なしを"n"
壊死組織ありを"N"
P:Pocket(ポケット)
ポケットが存在する場合にはDESIGNの後に"−P"と記述

●褥創の予防

−体位変換:
ベッド上では2時間ごとに体位変換を行なうことが基本とされる。
車椅子上では15分ごとのプッシュアップが理想とされる。
−栄養管理:
高タンパク質、高エネルギーのものがすすめられる。
−突出部の保護:
尾骨や、踵骨、各外内果(くるぶし等)の突出部にゲル、または粘弾性パッドを敷く。
直接保護材で覆うことで、摩擦や、圧迫による虚血を減少させる。
円座は周囲の皮膚が引っ張られ、接触部位が虚血状態になる為勧めれない。)
−血液循環を良くする:
局所の虚血を防ぐため、全身の血流を良くすることが勧められる。
離床、活動性を高めるよう心がける。

●褥創の治療

早期発見をし、専門医(皮膚科)の指導、処置を受けることをお勧めします。
−浅い褥創:
発赤の場合・水泡が破れていない場合はドレッシング材などによる保護。
(水泡は緊満の場合は、針で穴をあけ、内容物の排出をはかる。皮膚はむやみに剥がさない)
:表皮内のびらん、真皮までの潰瘍・水泡が破れている場合は、外用薬や、吸水性のあるドレッシング材を用いる。湿潤環境の維持、過度な滲出液を吸収し、創傷周囲の健常皮膚への侵軟を防止する効果がある。(肉芽形成促進、鎮痛、止血効果の報告もある)
−深い褥創:
基本的に、深い褥創は外科的デブリードマン(除去)の対象になることが多い。
個人で気をつけなければならないことは、局所を乾燥させないよう、滲出液が乏しい場合には、薬剤による保湿を心掛け、また、滲出液が多量な場合は、吸水性のあるドレッシング材を使用し、滲出液、細菌を吸収する事で、創面の洗浄効果で、壊死組織が除去される。(ガーゼのみの保護の場合、乾燥に繋がってしまうので、保護フィルムを併用すると良い。)

J-Workoutでは褥創が坐骨・仙骨・尾骨などにできてしまいますと、できるトレーニングが限定されてしまいます。 状態によってはトレーニング自体が行なえない場合もあり、長期間に治療が必要になるケースも少なくありません。 日ごろから褥創には十分に注意を払い、可能な範囲で予防を心がけ、早期発見、早期対処を行ない、小さな傷なども見逃さないようにしましょう。

【尿路感染症】

尿路感染症とは、腎臓、膀胱、尿道、前立腺、精巣、精巣上体などの尿の通り道に起きる感染症です。尿道から有害細菌が侵入することによって引き起こされる様々な障害のことです。原因菌としては大腸菌が最も多く、複雑性尿路感染では大腸菌の他、肺炎桿菌(はいえんかんきん)やブドウ球菌などの割合が多くなっていきます。
多くの脊損者は自力で排尿できない為、カテーテル等を使って導尿を行います。このとき、カテーテルを介して雑菌が尿道、膀胱に入り、炎症や敗血症の原因となるのです。また、オムツ内に長時間尿や、便を放置することで、細菌感染のリスクは高くなります。女性の場合は尿道口と肛門の距離が近く、尿道の長さも男性より短い為、リスクはより高くなります。排尿時には手指や器具の清潔を徹底しなければなりません。
症状は、常に尿意をもよおす、尿をするとき、したあとが痛い、下腹部の痛みと等の症状があります。しかし、脊髄損傷による麻痺で、これらの症状に気づけない事が多く、処置が遅れ、高熱、時には入院治療が必要になるケースは珍しくありません。早期治療を行なえるように、普段から、尿の状態を観察する習慣をつけ、尿の混濁、浮遊物、匂い、血尿などを確認しましょう。また、寒気、嘔気、嘔吐などの全身症状が現れることがありますので、これらの所見があった場合には速やかに医師の診察をうける必要があります。

尿路感染症がある場合、トレーニングを中止しなければなりませんので、しっかりとした自己管理が必要です。日ごろから合併症への意識を持ち、体調管理をしっかりおこなって万全の体勢でトレーニングに臨みましょう。

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治療に向けての研究

破壊された脊髄を再生し、再び機能を取り戻すことは全世界の脊損者の願いであり、様々な研究が進められています。

【受傷直後】

米国において、受傷直後、48〜72時間以内であれば、大量にステロイド剤を投与することによって後遺障害を抑える効果があるという報告がなされています。しかし確実性に疑問があり、副作用についても確認がなされていないこと、比較的若年の、再生力の強い患者以外には効果が薄いといわれている事、またこの方法は、日本はもとより米国においても州によっては認可されておらず、未だ一般化していません。
2005年7月には関西医科大学において、やはり受傷直後の患者に対し、自分の骨髄液を培養して脊髄に注入し、幹細胞の増殖を促すという方法の研究を進める計画が報じられました。
研究段階ではあるが2009年7月に米国科学アカデミー紀要に掲載された研究論文によると食品添加物の青色1号の一種であるブリリアントブルーGを脊髄損傷したラットに投与すると回復が見られたとされます。損傷後4時間以内に投与すれば二次障害の炎症を抑えて永久的な麻痺を回避できる可能性があり研究が進められています。

【再生医療】

現在最も有望視されているのが、骨髄や神経の幹細胞を用いた神経再生の試みである。動物実験では部分的な効果が報告されているが、人体に応用し治療に役立つには未だ基礎研究の段階であり、研究の強力な推進が望まれています。主として人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)の研究されていますが、まだまだ課題も多い状態です。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた場合、自分自身の細胞から作って自分自身に使うので拒絶反応は回避できると考えられるものの、臨床医療に利用するとなると、まだやらなければならないことがたくさんあります。また、胚性幹細胞(ES細胞)については、拒絶反応や腫瘍化の問題に加え、受精卵から作られるため倫理面での問題が指摘されています。

2005年現在、唯一臨床治療として行われているのが、中国の北京首都医科大学において、鼻粘膜細胞(OEG)を注入することで脊髄の再生を図るというものです。しかし同大からは長期にわたる治療効果の検証において、世界の研究者を納得させるデータの提出が無く、激しい疼痛やOEGの入手先(中絶胎児から採取)など問題が多数あり、2005年の時点で日本せきずい基金では「現段階で推奨できる治療法ではない」としています。

2011年9月の時点では、ヒトのiPS細胞から作った神経幹細胞移植で脊髄損傷のマウスを治療することに、慶応大学の岡野栄之教授らが成功しました。治療効果は約4カ月後も保たれ、がん化も見られませんでした。移植した神経幹細胞は通常の神経細胞に変化し、マウスの組織とつながるなどしていました。岡野教授は、現在サルを用いた実験を進めており、5年後をめどに臨床研究を始めたいとしています。

いずれにせよ、受傷後時間を経た慢性期の患者については、機械のように「切れたワイヤハーネスを繋ぎ直す」というような簡単なものではなく、「切れたところから再び神経を生やす」ということになるため、仮に神経再生が可能となったとしても、正常な位置に正常な神経が到達できるかは未知数です。

ただ、iPS細胞を移植して成功したとしても、膝・股関節・足首関節などの関節拘縮や筋委縮などがある場合、歩けるとは限りません。J-Workoutに入会していても、そうではなくても関節や筋肉を動かし続ける事がとても重要です。

【運動機能の回復】

現在、失われた運動機能を補助する研究が二方面から行われています。
ひとつは「外骨格」のように体にフレームを取り付け、歩行を可能にしようというものです。埼玉県所沢市の国立障害者リハビリテーションセンターや、藤田保健衛生大学のWPAL(Wearable Power-Assist Locomotor)、サイバーダイン株式会社の装着型自立支援ロボット「ロボットスーツHAL」など各所で研究がおこなわれています。人が身体を動かそうとすると脳から運動ニューロンを経て筋肉に神経電位信号が伝わり、身体は思い通りに動くことになりますが、その際、微弱な生体電位信号が皮膚表面にもれ出てきます。「ロボットスーツHAL」は、この信号を皮膚表面で検出し、コンピューター制御により各部モーターを駆動させて人の動きを支援する装着型ロボットです。

もうひとつは体内に電極を埋め込み、体外に接続されたコントローラーから神経に直接電気刺激を与え、本来の筋肉を動かそうというものです。既にフランスなどで実験された例があります。しかしまだ動きに整合性はなく、また長く使用しているうちに筋肉が発達してくることによりコントローラーのプログラミングを頻繁に調整しなくてはならないなど、脊髄損傷者への完全な実用化への道のりはまだ遠いようです。

J-Workoutでは、再生の促進と身体機能の回復のために機能的電気刺激(FES)を行います。毎回のトレーニングの前か後に必ずFESバイクを使った20分の運動をします。この技術は、足を自発的にほとんどまたはまったく動かせない人が、エルゴメーターと呼ばれる運動バイクのペダルを回転できるようにするものです。コンピューターで発生させた低レベルの電気パルスが電極を介して足の筋肉に伝達され、これによって筋収縮が誘発され、ペダルをこぐ動きを引き起こします。筋肉づくりや心肺機能の改善にFESが効果的であると記した医療文献記事が発表されています。

私たちが行っているトレーニングは慢性期患者においても、脊髄の迂回ルートを形成し、残存神経回路も再教育することで機能回復をしようとしています。FESのような外的刺激を使用はしますが、ロボット工学や体内に電極を埋め込む方法はとらず、自身の回復の可能性を最大限に引き出そうとしています。J-Workout独自のトレーニングで中枢神経を刺激し、運動ニューロンの委縮を防ぎ、神経の再活性化を行います。定期的なトレーニングは脳由来神経栄養因子を増加させ、末梢神経では運動による脳由来神経栄養因子の増加は軸索の再生と結びつきがあるといわれています。

上述にありますように、脳や脊髄といった中枢神経はひとたび損傷を受けると再生しないと考えられてきました。しかし、近年の論文によると脊髄には柔軟性があり、ある程度の学習あるいは適応能力があり、中枢神経も修復・再生する可能性があると言われています。脊髄神経回路には、繰り返しの刺激に対して一種の学習能力があり、また、長期にわたる特定運動が脊髄反射を特異的に変調させることも報告されています。J-Workoutでは積極的に下肢に体重をかけるエクササイズや、歩行パターンを繰り返すエクササイズなど数百を超える全身かつ複雑なエクササイズを繰り返し行う事で、脊髄神経回路に求心性情報を送り、繰り返しの刺激に対して脊髄中枢パターン発生期を活発化させ、歩行などの運動機能の再獲得を目指しています。

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